ブログ

【腸活の常識が変わる】乳酸菌は「億個」なのに、なぜ酪酸菌は「少ない数」でも劇的に効くの? 南流山内視鏡おなかクリニックの院長が解説

南流山駅からすぐ。新松戸・北松戸・三郷・八潮からのアクセスも良いです。
腸活の新常識。乳酸菌のお話し

お腹の調子を整えるサプリメントを選ぶとき、「乳酸菌1,000億個配合!」とか「1兆個のビフィズス菌!」といった、膨大な数をアピールする製品をよく見かけませんか?

「やっぱり、菌の数は多ければ多いほど効くんだろうな」と思ってしまいますよね。

実は、私たち医師が外来診療で最もよく処方する整腸剤の一つに、
「ミヤBM」という酪酸菌(らくさんきん)の薬があります。今回ご紹介する研究で対象となった
「宮入菌(みやいりきん)」そのものの製剤です。

私は以前から、ずっとある疑問を抱いていました。
スーパーで売っているヨーグルトや薬局のサプリメントに入っている乳酸菌は、
下手をしたら「1日1兆個」など圧倒的な菌数を誇ります。
それに比べ、ミヤBMに含まれる菌数はせいぜい1億個程度。つまり1万分の1しか入っていません。

しかも、外来で患者さんに「私たちの大腸には100兆個もの腸内細菌が住んでいます」と説明しながら、
その巨大なコミュニティに対して、わずか100万分の1にしかならない量の酪酸菌が、
一体何の役に立つんだろうか……?と、ひそかに思っていたのです。

一方で、実際にミヤBMを処方すると、
患者さんの下痢や腹痛症状がよくなっているというお声をたびたび聞いていました。
「なぜこんな少ない菌数で効くのだろう」と疑問に思いつつも、効果があるから処方する、
という日々が続いていたのです。

そんな中、まさに私の長年の疑問に明快に答えてくれるような画期的な研究結果が発表されました。
2025年にヨーロッパの医学誌『Microorganisms』に掲載された最新の臨床論文です。

今回は、この世界に誇る日本の「酪酸菌」の凄さが証明された論文のデータを元に、
「なぜ酪酸菌は少なくてもこれほど強いのか?」その秘密を分かりやすく解説します!

1. そもそも「酪酸菌」ってなに?乳酸菌と何が違う?

ヨーグルトなどで有名な「乳酸菌」は、腸内で乳酸を作って悪玉菌を追い出す、いわば「お掃除屋さん」です。
対する「酪酸菌」は、腸の部屋の壁を修理する「大工さん」兼「優秀な警備員」のような存在です。

酪酸菌が作る「酪酸(らくさん)」という成分は、次のようなすごい役割を持っています。

傷ついた腸の壁を修復して、水分の吸収を正常にする(下痢を止める)
腸の暴走(微細な炎症)を抑えて、お腹の痛みを鎮める
腸全体の『生物の多様性(たくさんの種類の菌がいる状態)』を増やす

今回の実験では、ストレスや原因不明の下痢・腹痛が続く「下痢型過敏性腸症候群(IBS-D)」の患者さん205名に、この酪酸菌(宮入菌)を8週間飲んでもらいました。

2. 驚きの実験結果:下痢の回数が「80%以上」も減った!


8週間、酪酸菌を飲み続けた患者さんたちのお腹には、劇的な変化が起こりました。

突発的な下痢の回数が「80%以上」減った!
毎日の排便回数や、お腹の痛みが「約60%」も減った!
お腹の不快感や、日常生活でのストレスが「半分以下」になった!

病院でもらう一般的な下痢止めの薬(トリメブチンなど)と比べても、
完全に同等かそれ以上の優れた効果がデータとして証明されたのです。

3. なぜ?乳酸菌より圧倒的に「少ない数」で効く理由


では、なぜミヤBMのような「一握りの人数(1億個程度)」しかいない酪酸菌が、
100兆個の巨大な腸内細菌の国を動かし、劇的な効果を生むのでしょうか?理由は大きく3つあります。


理由①:数で戦わない!「腸の免疫スイッチ」をピンポイントで押すから

酪酸菌は、数で腸内を埋め尽くそうとはしません。
代わりに、「腸にある免疫のスイッチ(受容体)」にカチッと一発ではまる、非常に優秀な鍵(シグナル)を持っています。

下痢や腹痛が続くお腹の中では、目に見えないレベルの「微細な火事(炎症)」が起きていて、
これが神経を刺激して痛みを起こしています。
酪酸菌は、数が少なくてもこの火事のセンサー(NLRP6など)にピタッと張り付き、
「火事を消せ!」という強力な命令信号を出します。生体がその信号を何倍にも増幅して受け取るため、
少ない数でもお腹の痛みが一気に鎮まるのです。

  • 理由②:自分が主役にならず、眠っている「味方の菌」を呼び覚ますから

今回の実験データで非常に興味深い点は、8週間後に患者さんの腸内を調べても
「飲んだ酪酸菌(宮入菌)自体は、ほとんど増えていなかった」ということです。

「増えなかったなら意味がないのでは?」と思うかもしれませんが、逆です。

酪酸菌はお腹に入ると、自分が主役になって増えるのではないのです。
患者さんの腸内で元々眠っていた「別の優秀な味方の菌(酪酸菌の仲間たち)」を呼び覚ます着火剤として働いた結果、
腸内の菌のバラエティ(多様性)が約20%もアップし、お腹全体の環境がガラリと味方優勢に変わりました。

  • 理由③:天然の酪酸菌は「殻(細胞壁)」が頑丈だから

ミヤBM(宮入菌)は、胃酸や胆汁という「強い酸」に負けない、『芽胞(がほう)』という非常に頑丈な天然のカプセル(細胞壁)に包まれています。

途中で壊れることなく、綺麗な形のまま腸の奥(免疫細胞が集まる場所)まで生きて届くため、1個あたりの「打率(スイッチを押す確率)」が他のひ弱な菌に比べて圧倒的に高いのです。

4. じゃあ、数の多い乳酸菌は「数だけ」が取り柄なの?

ここまでの話を読むと、「じゃあ、たくさん数が入っている乳酸菌サプリは、数が多いだけで効率が悪いの?」と
思われるかもしれません。

それはそれで大きな誤解です。
乳酸菌には、酪酸菌とはまったく違う「数が少なくても、あるいは死んでいても効果が出る」という
別の素晴らしい仕組みがあります。

乳酸菌の本当の凄さは、腸内で増えることだけではありません。
菌の体そのものが、私たちの免疫を呼び覚ますのように働く点にあります。

  • メカニズム①:1個あたりの「免疫スイッチ」を叩く力が圧倒的に強い

私たちの腸には、外から入ってきた味方の菌を認識する「センサー(受容体)」が備わっています。

特にK1乳酸菌などの「お米の乳酸菌」をはじめとする一部の優秀な植物性乳酸菌は、
過酷な環境を生き抜くために「非常に強固な細胞壁(鎧)」をまとっています。
この構造がきれいに維持されたまま腸に届くため、たった1個の菌であっても、
腸の免疫センサーを「カチッ」と非常に効率よく刺激することができます。

つまり、「1個あたりのシグナルを伝える力が驚くほど高い」ため、実は少ない菌数であっても、
十分に体全体の免疫バランスを整えたり、肌のバリア機能を高めたりするスイッチを押すことができるのです。

  • メカニズム②:「生菌数」に振り回される必要はないという事実

「生きたまま腸に届く」というフレーズをよく耳にしますが、
実は近年の腸内細菌学では、「乳酸菌は死んだ菌であっても、生菌と変わらない効果を発揮する」ことが
明らかになってきています。

乳酸菌の表面にある大切な成分が免疫細胞に触れさえすれば、菌が生きているか死んでいるか、
あるいは数が多いか少ないかに関わらず、体が「お、味方が応援にきてくれたぞ!」と反応して元気になるのです。
サプリメントで数が多く設定されているのは、
どんな腸内環境の人でも確実にそのスイッチを叩けるようにするための
「安全マージン(物量による担保)」に過ぎません。

5. これからの腸活は「数」から「役割・相性」へ

今回の論文が教えてくれたのは、「乳酸菌がダメで、酪酸菌が良い」ということでは決してありません。

  • 乳酸菌: 頑丈な体を活かして腸の免疫センサーを刺激し、全身の免疫バランスや肌のバリアを整える「全身の調律師」
  • 酪酸菌: 腸の奥にピンポイントでアプローチし、お腹の火事(炎症)を鎮めて下痢や腹痛を根本から止める「お腹の守護神」

というように、それぞれ全く異なる得意技を持っています。

別の言い方では、どの整腸剤が一番強いというわけではなく、それぞれの人のお腹にあう菌は「試してみないとわからない」ともいえます。

「たくさん菌が入ったサプリを飲んでいるけれど、お腹の痛みが引かない……」という方は、数の多さだけで選ぶのをやめて、自分の悩みに合った「役割」を持つ菌に変えてみたり、この2つを組み合わせてみたりすることが、お腹の悩みを解決する近道になるかもしれません。

6. 市販の整腸剤と、病院(消化器内科)で処方される薬の違い

「酪酸菌や乳酸菌が体に良いなら、ドラッグストアで市販の整腸剤を買えば十分なのでは?」と思われるかもしれません。

確かに市販薬にも優れたものは多いですが、医療機関(消化器内科)で処方される
「ミヤBM」などの医療用医薬品とは、「菌の純度(配合量)」「組み合わせの最適化」が異なります。

また、私たち専門医は、単に菌を出すだけでなく、
患者様の「現在の便の専門的な状態」や「食生活」を総合的に判断し、
必要に応じて腸の過剰な動きを抑えるお薬(過敏性腸症候群の専門薬など)を精密に組み合わせて処方します。
ここが、自己判断での市販薬選びとの一番大きな違いです。

7. 長引くお腹の不調には「別の病気」が隠れていることも

「ただの下痢だから」「いつもの腹痛だから」と、市販のサプリメントだけで様子を見続けることには、
実はリスクもあります。
なぜなら、慢性的な下痢や腹痛、お腹の張り(膨満感)といった症状の裏には、
過敏性腸症候群(IBS)だけでなく、以下のような専門的な治療が必要な病気が隠れている可能性があるからです。

  • 潰瘍性大腸炎やクローン病(腸の粘膜に慢性的な炎症が起こる難病)
  • 大腸ポリープや大腸がん(初期は自覚症状が乏しく、便通異常で気づくことも)
  • 感染性腸炎(細菌やウイルスによるもの)

もし、上記の症状で受診された場合、当院の消化器内科では、まずは問診でお腹の痛むタイミングや便の様子を詳しく伺い、必要に応じて血液検査や大腸カメラ(大腸内視鏡検査)などを行い、「本当に安心できる状態か」を専門医の目できちんと見極めます。

8. 新松戸・北松戸からもアクセス良好!お腹の不調が続く方は、お気軽に当院へご相談ください

市販の乳酸菌サプリや整腸剤を試しても「なかなか下痢や腹痛が治まらない」という方は、
腸の中で微細な炎症が続いている可能性があります。
今回ご紹介した酪酸菌(ミヤBMなど)は当院での処方も可能です。

もし、長引くお腹の張りや突発的な便通異常にお悩みなら、
それは「過敏性腸症候群(IBS)」など、何かしらの病気かもしれません。
当院の消化器内科外来では、患者様お一人おひとりの腸内環境や症状に合わせ、
最適な食事指導や適切な整腸剤・お薬の処方を行っています。

「これくらいで受診してもいいのかな」と悩まず、まずは一度、お気軽に当院までご相談ください。

・この記事の根拠となった医学論文

さらに詳しく研究内容を知りたい方は、以下の論文(原文・英語)をご参照ください。

  • ① 今回の主軸となった下痢型IBSに対する宮入菌の最新臨床論文(2025年発表)

Clinical Efficacy and Gut Microbiota Modulation of Clostridium butyricum CBM588 in IBS-D Patients(Microorganisms 2025, 13(5),1139)