肛門科について
当院では、患者さんのプライバシーを第一に考えて、相談し易い環境、リラックスして治療を受けられる環境を整えています。肛門疾患はデリケートな部位である為、症状が現れていてもつい恥ずかしさから受診のタイミングが遅くなってしまうケースが多く見られます。症状に我慢ができなくなってから、或いは受診した頃には重篤な疾患となっていることが多いのが実状です。肛門疾患で多いのが痔ですが、痔はいぼ痔(痔核)、切れ痔(裂肛)、痔瘻と分けられ、それぞれ治療のアプローチが異なります。痔の治療というと痛みが強いというイメージがあると思いますが、早期に介入することで痛みを最小限に抑えることができます。また肛門・排便に関するトラブルには、痔だけではなく大腸癌などの悪性の病気の可能性もある為、なるべく早く受診する必要があります。肛門疾患の症状で気になることがありましたら、どうぞためらわずに当院にご相談ください。
肛門疾患の主な症状
肛門の出っ張り
脱出が伴う内痔核(いぼ痔)、肛門ポリープ、直腸が脱出する直腸脱の場合、肛門の出っ張りの症状が見られます。稀に、大腸ポリープが直腸に生じることで脱出するケースでも、肛門の出っ張りを感じることがあります。それぞれ治療の仕方が違うので、正しく診断して適切な治療を受けることが必要です。
肛門からの出血
肛門疾患で多く見られる症状が肛門からの出血です。主に疑われる病気は、いぼ痔(痔核)、切れ痔(裂肛)などですが、癌や潰瘍などによる胃腸からの出血と判断が難しいこともあります。また、腸に炎症や潰瘍を起こす潰瘍性大腸炎やクローン病の場合も、肛門からの出血症状が見られます。このように、肛門から出血した場合、痔などの肛門疾患以外の原因がないことを、内視鏡検査などで確認したほうが良いことがあります。
肛門の痛み
肛門の痛みが現れる疾患は、痔核(いぼ痔)、血栓性外痔核(いぼ痔)、切れ痔(裂肛)、肛門周囲膿瘍などです。
肛門のかゆみ
肛門の痒みが現れる疾患として疑われるのは、肛門周囲の皮膚炎や、真菌(カビ)などによる感染が考えられます。
肛門の病気
痔核(いぼ痔)肛門付近にイボの様に腫れが生じる状態をいぼ痔と言います。いぼ痔には、イボが肛門内側に生じる内痔核と、外側に生じる外痔核の2種類があります。排便時に強くいきむ習慣や、長時間座った状態で肛門周囲が圧迫されることなどによって、肛門周囲の血液の流れが停滞することが原因で生じます。
内痔核
イボが肛門の内側に発生するのを内痔核と言います。肛門の内側は、直腸の粘膜部分の為、痛みを感じることはありません。主な症状は出血や腫れによる違和感、そして痛みです。痔核からの出血は、ふつう痛みは生じません。痔核が大きくなるにしたがって、脱出するようになります。最初は排便時にいきんだときに脱出して、いきみを止めると自然に戻ります。しかし、だんだん戻りにくくなり、自分で押しこまないと戻らなくなっていきます。さらに進行すると戻らなくなってしまうこともあります。痔核が脱出して血流障害が生じると激しい痛みが生じることもあり、この状態を嵌頓(かんとん)痔核と言います。
イボがまだ脱出していない状態、或いは脱出しても指で押し戻せる段階では、坐薬や軟膏などの薬物療法を行います。それと同時に排便習慣や生活週間の改善指導を行います。脱出が気になるときや、出血や痛みが続くときは手術治療の適応になります。
外痔核
肛門の外側にできるイボを外痔核と言います。出産後の女性などで比較的多く見られますが、症状が無い場合、経過観察することが多いです。突然強い痛みが生じて、肛門にイボができた時は、血栓性外痔核を疑います。放置しても痛みや腫れが消えていくこともありますが、症状が強い場合は速やかに治療を受けることが必要です。
切れ痔(裂肛)
肛門の皮膚が裂けて傷が出来た状態を切れ痔(裂肛)と言います。便秘などで便が硬くなったり、下痢が勢いよく通過した時の刺激などによって、肛門付近の皮膚が裂けて傷ができてしまいます。排便時に肛門が切れた時に真っ赤な血が出て驚かれることが多いです。傷の痛みによって排便を我慢し、便秘が悪化してしまうこともあります。切れ痔はいったん治っても繰り返すことが多い疾患です。主な治療は座薬や軟膏を使って痛みや傷を治すことと、下剤などを使って便の硬さを調整することです。繰り返す切れ痔によって慢性化すると傷の部分が硬くなり、肛門が狭くなることがあります(肛門狭窄)。肛門が狭くなってしまうと薬などの保存的治療では改善しないため、手術が必要です。
痔瘻(じろう)
直腸と肛門周囲の皮膚をつなぐトンネル状の管が出来た状態を痔瘻(じろう)と言います。直腸と肛門の間にある窪みから細菌に感染することで発症します。下痢など勢いのある排便などがきっかけとなり、免疫力低下などに乗じて細菌が窪みに侵入し、肛門周囲に膿が溜まる肛門周囲膿瘍という膿の袋を作ります。肛門周囲膿瘍が慢性化し、この袋内の膿が外に排出しようと肛門外側の皮膚に突き破って穴が開き、その管がトンネル状に貫通した状態です。肛門周囲が腫れてズキズキと痛む、お尻に熱を持つ、お尻から膿が出ている、発熱などの症状が現れます。痔瘻(じろう)は、トンネルの出来る位置や深さ・向きなどによって種類が細分化される為、痔の中でも診断や治療が難しい病気と言われています。他の痔と異なって薬物療法や排便習慣改善などでは効果があまり期待できず、また放置すると癌化する恐れがある為、手術治療が一般的です。その場合、クローン病などの合併症の有無を調べる為に大腸内視鏡検査を行います。
肛門ポリープ
肛門の入口からごく近い場所に発生するイボのような突起物を肛門ポリープと言います。肛門と直腸の境目にある歯状線付近には凹凸が並ぶ肛門乳頭があります。ポリープのサイズは様々で、微細なものから親指ぐらいの大きさまであり、形も様々です。病状の進行によって、排便時の脱出や出血があり、脱出したポリープは指で戻すことが出来ますが、肛門周囲がかぶれてしまうことがよく見られます。大きなポリープがあると、排便後の残便感や、常に排便したい感覚が起きるなど不快感が生じます。主な原因は、下痢や便秘を繰り返すことや、痔核・裂肛・痔瘻などの歯状線付近の慢性的な刺激や炎症とされています。治療は、切除が一般的です。肛門ポリープは、大腸ポリープとは異なり、癌化することはありませんが、残便感・脱出・出血などによって生活の質が低下することがあるので、治療を受けることをお勧めします。
肛門皮垂(ひすい)
外痔核などで肛門が一時的に腫れて、その後萎縮することで皮膚のたるみができて垂れるように残った状態を肛門皮垂と言います。皮垂によって排便後清潔を保つことが難しく、かぶれ易い場合や審美的なことから気になる場合には切除治療を行います。
肛門周囲皮膚炎
肛門周囲が炎症を起こすことで、痒みや痛み、べたつき、下着の汚れなどが見られます。主な原因として、カンジダなどの真菌症、痔核、ポリープ、裂肛、肛門皮垂などの肛門疾患・アレルギー性疾患などが挙げられます。また、洗浄を頻繁に行ったり、お尻を拭きすぎたりなども原因となります。治療は、真菌症の疑いがある場合は、まず真菌検査を行います。この場合、軟膏処置では悪化することがあるので注意が必要です。その他、炎症の原因に応じて軟膏や内服薬の処方を行い、処置していきます。できるだけ清潔を保つことが大事ですが、過剰な手入れをしないことも重要です。
肛門科の手術について
当院では、日本大腸肛門病学会指導医が診察を行います。診察後、手術による治療が必要となった場合には、連携の医療機関をご紹介しております。
肛門診療の流れ
Step.1問診
診察室で医師による問診を行います。患者さんのお悩みをはじめ、つらい症状や排便の状態・頻度・生活習慣などを丁寧に伺います。それと同時に、既往症や現在服用している薬がある場合はお知らせください。
Step.2視診・指診
ベッドに横になります。腰にタオルをかけますので、お尻が見えるところまで下着を下ろしてお待ちください。洋服は脱がなくて結構です。身体を横にして足を抱えた姿勢だと、洋服を脱がずに診てもらうことができ、また医師の顔を直接見なくて済むので心的負担が最小限となります。指診は、麻酔ゼリーを塗ってゴム手袋の指を肛門より挿入して、肛門にしこりやポリープ・肛門狭窄がないかどうかを調べます。麻酔薬入りのゼリーを使って診察することで、痛みや不快感を最小限に抑えます。
Step.3診察
肛門鏡による診察肛門鏡という、筒状の器具を肛門へ挿入します。肛門鏡を用いてお尻を指で広げるだけでは診ることができない、そして内痔核が生じる場所である直腸と肛門の境界(歯状線)をよく診察します。Step.4診断・説明
医師による診断・検査結果説明を丁寧に行います。患者さんの病状を詳しく説明しながら、今後の治療について相談していきます。現在の症状や疑われる疾患によっては、大腸内視鏡検査などで詳細に調べる必要があります。また、治療は患者さんの理解と納得を得てから進めるのでどうぞご安心ください。