
虚血性腸炎の典型的な症状:3つのステップと見分け方
虚血性腸炎は、実は私たち専門医が患者さんのお話を詳しく伺う(問診)だけで、
「おそらく虚血性腸炎だろう」とおおよその見当がつくほど、非常に特徴的なパターンの経過をたどります。
多くの患者様が経験される、典型的な3つのステップをご紹介します。
ステップ1:突然の激しい腹痛(特に左下腹部)
夜中や明け方に、突然お腹(特に左側やへその下あたり)が雑巾を絞られるように激しく痛み出します。
痛みが強くて冷や汗を伴うことも珍しくありません。
この「前触れのない突然の腹痛」が虚血性腸炎の最も典型的な始まり方です。
💡なぜ夜中や明け方に多いの?
人間は寝ている間、血圧が自然と下がります。また、日中に頑固な便秘でトイレで強く「いきんだ」ことによる腸への負担や、就寝中の脱水(水分不足)などが重なり、数時間のタイムラグを経て、夜中や明け方に大腸の血流低下が限界を迎えて発症するためです。
ステップ2:便意をもよおしてトイレに行くが、すぐには出ない
激しい痛みに襲われると同時に、強い便意を感じてトイレに駆け込みます。
しかし、すぐには便が出ず、痛みに耐えながらしばらくトイレにこもることになります。
この痛みは狭心症など虚血性心疾患と同じく、血流不足によって酸素や栄養の供給が不足した結果、大腸の細胞からブラジキニンや乳酸といった体の危険を知らせる物質が放出され、これが神経を刺激することによって生じます。
さらに、血流不足に陥った大腸がパニックを起こし、腸管が激しくけいれん(過緊張)を繰り返すため、便意があるのにすんなり出ない状態になります。
ステップ3:下痢、そして「血便(下血)」へ
しばらくするとようやく便が出始めますが、すぐに泥状の下痢便に変わります。 そしてここからが特徴的です。最初は普通の下痢便に「血液が混じる」程度ですが、その後トイレに行くたびに血液の割合が増え、最終的には「ほとんど真っ赤な血(鮮血)だけ」が何回も続けて出るようになります。この下痢便から血便への変化は数時間以内に起こります。
なぜ問診だけで見当がつくのか?「痛みを伴う血便」の重要性
お尻から血が出る病気はいくつもありますが、「突然の激しいお腹の痛みを伴う」という点が、虚血性腸炎の一番の特徴になります。
他のお尻の病気や大腸の病気と比較してみましょう。
・憩室出血(けいしつしゅっけつ):
高齢者を中心に増えている「大腸の壁のくぼみ(憩室)から出血する病気」ですが、憩室出血は基本的に腹痛を伴いません。あるとき突然、痛みもなく大量の血便が出ることが特徴です。
・痔核・裂肛(いわゆるいぼ痔・切れ痔):
肛門から出血する病気の代表格ですが、お腹に激しい痛みにを起こすことはありません。ただし、急性腸炎などでお腹が痛くなって下痢をする、それによって肛門に負担がかかって出血するという経過(下痢の二次災害による出血)で、腹痛+血便という状況はありえます。問診やお腹、肛門の診察で虚血性腸炎との区別にあたりをつけます。
・発熱の有無:
腸の感染症(感染性腸炎など)では発熱を伴うことが多いですが、虚血性腸炎は一時的な血流不足が原因であるため、ほとんどのケースで発熱を伴うことはありません。
つまり、「熱はないのに、突然お腹(特に左側)が激しく痛み、その後に下痢と真っ赤な血便が続いた」というステップを踏んでいる場合、まず虚血性腸炎を疑います。
⚠️高齢者の方への注意点
基本的には強い痛みを伴う病気ですが、高齢者の方の場合、特徴である「強い腹痛」をあまり感じず、下痢の後に血便が出てきたと話されるケースがあります。
当院では、専門的な肛門科・消化器内科の両方の視点からアプローチし、他の血便(憩室出血や痔核・裂肛、癌や潰瘍性大腸炎など)との見分けを慎重に行っています。
今までに経験の無い血便が出た場合は自己判断で様子を見ず、すぐにご相談ください。
⚠️今すぐ受診すべき危険なサイン
虚血性腸炎の多くは、適切な治療を行うことで数日から 1 週間程度で自然に軽快する(予後が良い)病気です。
ただし、同じ「腸の血流障害」であっても、より太い血管が詰まる「急性腸間膜動脈閉塞症」や、血圧低下などが原因で広範囲の血流が途絶える「非閉塞性腸間膜虚血(NOMI)」といった別の病気の場合は、一刻を争います。
これらの重症疾患では、大腸や小腸の組織が急速に壊死(えし)したり、腸の壁に穴が空いたり(穿孔:せんこう)して、緊急手術を要することがあります。
自然に治ることの多い虚血性腸炎とは異なり、これらの疾患は速やかな外科的治療が必要となるため、正確な鑑別(見分け)が極めて重要になります。
以下のような症状が見られる場合は、夜間や休日であっても我慢せず、すぐに救急医療機関を受診するか、救急車を呼んでください。
・時間が経ってもお腹の激痛がまったくおさまらない、むしろ悪化している
・お腹全体が板のようにカチカチに硬くなり、軽く触れただけでも激痛が走る(腹膜炎の疑い)
・冷や汗が止まらない、めまいがする、意識が遠のく(ショック状態)
・便器が真っ赤に染まるほど、大量の血液(下血)が何度も続けて出ている
・高熱(38度以上)を伴っている
⚠️受診するまでの応急処置・やってはいけないこと
「急に激しい腹痛におそわれ、血便が出た」というパニックになりやすい状況だからこそ、正しい初期対応が重要です。
良かれと思って行った自己判断のケアが、かえって症状を悪化させたり、
病院での検査や診断を難しくしたりすることがあります。
1. 【最も危険】自己判断で市販薬を飲まない
下剤・便秘薬の服用は絶対にNG
「まだお腹に便が残っている気がする」からといって、自己判断で下剤や便秘薬を飲むのは大変危険です。血流不足によってただでさえ傷つき、弱っている大腸を無理やり動かすことになるため、腸管に穴が空く(腸管穿孔)などの致命的な合併症を引き起こすリスクがあります。
市販の痛み止め(解熱鎮痛薬)も控える
ロキソニンやイブなどの消炎鎮痛剤は、胃腸の粘膜を荒らす副作用があるだけでなく、本来の痛みの強さを隠してしまいます。これにより、医師が「緊急手術が必要な重症度かどうか」を正しく判断できなくなる原因になります。
2. 水分補給は「少しずつ」、食事はお腹の痛みが軽快するまで「控えめに」
虚血性腸炎のときは、傷ついた大腸をいたわるために「腸を休ませること」が大切です。ただし、完全に水も食事も一切断つような極度の絶飲食が必要なわけではありません。下痢や下血による脱水を防ぐためにも、水分補給はむしろ重要です。
水分(スポーツドリンクや経口補水液、白湯などが最適)を摂る際は、一気に飲むと腸が刺激されて痛むことがあるため、「ひと口ずつ、こまめに」飲むのがポイントです。
食事に関しては、お腹の激しい痛みが落ち着くまでは一旦控えめにし、受診して医師の指示を仰ぎましょう。痛みが軽快してきたら、医師と相談の上で、おかゆやうどんなど消化の良いものから少しずつ再開していくのが一般的です。
3. 血便(下血)の様子をスマートフォンで写真に撮っておく
診察の際、「どれくらいの量の血が出たか」「色は鮮血(真っ赤)か、それとも暗い赤(暗赤色)か」は、虚血性腸炎の重症度や、他の出血性疾患(大腸がん、憩室出血など)と見分けるために、参考になります。
言葉で伝えるのは難しいため、可能であればトイレの様子(便の状態)をスマートフォンのカメラで1枚撮影し、診察時に医師に見せていただけると、より迅速で正確な診断につながります。
新松戸・北松戸・八潮・三郷からも好アクセス|南流山の消化器内科・肛門科
当院では、専門的な肛門科・消化器内科の両方の視点からアプローチし、他の血便(憩室出血や痔核・裂肛、大腸がんや潰瘍性大腸炎など)との見分けを慎重に行っています。
突然の血便は非常に不安になるものですが、自己判断で様子を見ず、まずは専門医の診察を受けることが大切です。
当院は南流山駅近くに位置しており、流山市内はもちろん、JR武蔵野線・つくばエクスプレス・流鉄流山線などを通じて、新松戸・北松戸・八潮・三郷エリアからもアクセス良好です。「受診すべきか迷う」という場合も、まずは安心してお気軽にご相談ください。
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