大腸カメラを受ける最大の目的の一つは、将来命を脅かす大腸がんの予防です。その鍵を握るのが、「大腸ポリープ」の早期発見と切除です。しかし、「もし検査中にポリープが見つかったら、別の日に改めて手術の予約をして、何日も入院しなければならないのだろうか?」と不安に思う方もいらっしゃるでしょう。ご安心ください。現在の内視鏡医療では、検査中にその場でポリープを切除する「日帰りポリープ切除手術(日帰りポリペクトミー)」が主流となっています。その画期的な仕組みと、切除後の生活での注意点について解説します。
大腸ポリープとは何か?なぜ切除が必要なのか
大腸ポリープとは、大腸の粘膜の一部がいぼ状に盛り上がってできた腫瘍のことです。すべてがすぐに悪性(がん)というわけではありませんが、その多くは「腺腫(せんしゅ)」と呼ばれるタイプであり、数年かけて大きくなるうちに細胞が変異し、一部が「大腸がん」へと悪化するリスクを秘めた「前がん病変」です。そのため、がんになる前のポリープの段階で根こそぎ切除してしまうことが、最も確実な大腸がん予防となります。
放置すると数年で「大腸がん」に進行する前がん病変
昔はポリープ切除のために入院が必要なケースも多かったのですが、内視鏡技術と処置具の進歩により、現在は外来での「日帰り手術」が可能になっています。
入院不要!検査中に完了する「日帰りポリープ切除」
その場で切除して一度の通院で完結するメリット
大腸カメラの観察中に切除すべきポリープが見つかった場合、血液をサラサラにする薬を飲んでいるなどの特別な事情がない限り、そのまま内視鏡の先端から専用の器具を出して、その場で切除を行います。後日改めて手術日を予約し、下剤をもう一度飲む必要がないため、患者様の時間的・身体的負担が大幅に軽減されます。
ポリペクトミーとEMR(内視鏡的粘膜切除術)の違い
ポリープの形や大きさに合わせて最適な術式を選択します。
- ・ポリペクトミー:キノコのように茎があるポリープに対して、スネアという金属の輪を茎にかけて高周波電流で焼き切ります。最近は高周波を流さずに、スネアをすぼめてそのまま切除する、コールドポリペクトミーがよく行われます。高周波を流す場合に比べて、切除後に出血する、ポリープ切除後出血のリスクが低くなるためです。ポリープの大きさや形をもとに、コールドまたはホット(高周波を流す)のポリペクトミーを選択します。
- ・EMR(内視鏡的粘膜切除術):平坦で茎のないポリープに対して、病変の下の層に生理食塩水などを注射して人工的に浮き上がらせてから、スネアをかけて、高周波を流して安全に切り取ります。
「腸の中でポリープを切る」のは痛くないの?
大腸の粘膜には痛みを感じる神経が存在しない
「腸の中の肉を焼き切るなんて、すごく痛そう」と心配されるかもしれませんが、全く痛みは感じません。大腸の粘膜層には痛覚(痛みを感じる神経)が存在しないためです。鎮静剤で眠っている間に、無痛のうちに処置が完了します。
日帰り手術後の生活制限と重要な注意点
術後出血を防ぐための食事・運動・入浴の制限
手術自体は日帰りで終わりますが、切除した部分は人工的な「潰瘍(傷口)」。そのため、かさぶたが剥がれて術後出血(後出血)を起こすのを防ぐため、生活制限が必要です。
- ・激しいスポーツや重いものを持つ作業を避ける
- ・長風呂やサウナを避け、シャワー程度にする
- ・アルコールの摂取や刺激の強い食事を控える ・気圧の変化を伴う長距離の移動(飛行機など)を避ける
- ・病変の大きさや形、また切除の方法によって出血の危険性が変わります。生活制限の程度は、検査を担当された先生にご確認ください。
ポリープ切除は究極の「大腸がん予防」
大腸カメラを受け、ポリープをその場で切除することは、未来の大腸がんリスクを摘み取る究極の予防法です。

