
南流山・新松戸で虚血性腸炎の治療・相談なら|原因・症状と大腸の仕組みを医師が解説
虚血性腸炎とは?そのメカニズムと大腸の仕組み
「虚血性腸炎(きょけつせいちょうえん)」という病名を聞いても、あまりピンとこない方が多いかもしれません。この病気を正しく理解するために、まずは言葉の意味から紐解いていきましょう。
そもそも「虚血(きょけつ)」とは?
虚血とは、「組織にめぐる血液の量が一時的に不足すること」を言います。心臓の血管が狭くなって胸が苦しくなる、狭心症や心筋梗塞のことを「虚血性心疾患」と言いますが、これと同じメカニズムです。
心臓で起こる血管のトラブルが、大腸の血管で一時的に起こってしまった状態が「虚血性腸炎」なのです。
腸の壁に十分な血液(酸素や栄養)が届かなくなると、腸の粘膜がダメージを受けてただれてしまいます(炎症や潰瘍)。
その結果、「突然の激しい腹痛」が起こり、傷ついた粘膜から出血することで「血便(下血)」が引き起こされます。
大腸のルート(解剖)と、病気が起こりやすい場所
人間の大腸は、ぐるりとお腹を一周するようなおよそ1.5メートルの1本の管です。
実は、場所によって以下のように分かりやすい名前がつけられています。
・盲腸(もうちょう): 盲(目が見えない)から転じて、先が見通せない、行き止まりのということを表す(肛門側からみると大腸の終点)。
・上行(じょうこう)結腸: 右下腹部から始まり、右上に向かって「上に行く」腸です。
・横行(おうこう)結腸: 右上から左上に向かって「横に行く」腸です。
・下行(かこう)結腸: 左上から左下に向かって「下に行く」腸です。
・S状(えすじょう)結腸: 左下腹部から肛門へ向かう途中にある、ぐにゃぐにゃと「S字状にカーブしている」腸です。(「S字結腸」という言葉をよく聞きますが、「S状結腸」が正確な名前です)
・直腸(ちょくちょう): 最後に肛門へと「直線状に」つながる腸です。

虚血性腸炎は、大腸のどこにでも起こるわけではありません。
「下行結腸」や「S状結腸」という、お腹の左側のエリアに圧倒的に多く発症する(好発する)という大きな特徴があります。
なぜ「S状結腸(左側のおなか)」に起こりやすいの?
これには大腸の血管の構造(解剖学的な理由)が関係しています。 大腸にはいくつかの大きな動脈から枝分かれした細い血管網が張り巡らされていますが、ちょうど左側のエリア(下行結腸やS状結腸のあたり)は、別々の太い動脈から伸びてきた血管の「終着点同士が合流する境界線(吻合部)」にあたります。
ここは例えるなら、水道管のいちばん末端のような場所です。そのため、体全体の血流が少しでも滞ると、真っ先に影響を受けて水(血液)が届きにくくなってしまいます。 さらに、S状結腸はぐにゃぐにゃと曲がっているため便が滞留しやすく、便秘のときに圧力がかかりやすい場所でもあります。
このように「血管の末端であること」と「便が溜まりやすいこと」が重なるため、虚血性腸炎が起きると、左下腹部やへその下あたりが激しく痛むことになるのです。
虚血性腸炎になりやすい人の特徴:昔と今の違い
では、どのような人がこの病気になりやすいのでしょうか。医学的なデータ(疫学)を交えて解説します。
昔から言われている「典型的なリスク」
かつて虚血性腸炎は、血管の老化や持病がある「高齢者の病気」とされてきました。
日本消化器病学会の各種ガイドラインの背景データや国内外の統計でも、以下のようなリスク因子がある方に発症しやすいことが明確に示されています。
・血管の老化(動脈硬化): 血管が硬くなる「動脈硬化」や、血流が不安定になりやすい不整脈、微小な血管がダメージを受けやすい「糖尿病」などの持病があると、急激な血流の変化に対応できず、大腸の虚血が起こりやすくなります。
・年齢別の発症割合: 米国の著名な消化器病学会誌である『The American Journal of Gastroenterology』の臨床ガイドラインなどに掲載された大規模な疫学調査によると、虚血性腸炎の患者全体の約80%は高齢者が占めており、年齢が上がるにつれて発症率が上がることが分かっています。このことからも、年齢や血管の持病が重大なリスク因子であることは間違いありません。
・発症部位のデータ: 国内外の臨床統計において、虚血性腸炎の大半(約8割以上)は「左側の大腸(下行結腸からS状結腸など)」に集中して発症することが統計的にも証明されています。
【現在では】若い世代でも意外と多い
しかし、近年の臨床現場はじゃっかん様変わりしています。特に目立った持病(糖尿病や高血圧など)がない方や、20代〜40代といった若い世代の患者さんでも診断されることがよくあります。
血管に問題がない若い世代の患者さんに、なぜ虚血性腸炎が起こるのでしょうか。
その大きな引き金として、現代病ともいえる「便秘」や「過敏性腸症候群(IBS)」が挙げられます。
国際的な医学論文データベース(PubMed)に掲載されている大規模な臨床調査データ(※1)によると、虚血性腸炎のリスク増加はこのように報告されています。
・便秘がある方: 便秘のない人に比べて、虚血性腸炎のリスクが2.78倍増える
・過敏性腸症候群(IBS)がある方: IBSのない人に比べて、発症リスクが便秘よりも高い3.17倍になることが分かっています。
高齢者の場合は動脈硬化などによる血管自体の問題(血流の低下)が主な原因ですが、若い世代や持病のない方にとっては、頑固な便秘でトイレでいきむことによる腸管への負担、過敏性腸症候群(IBS)に伴う腸の激しいけいれん(過緊張)、水分不足(脱水)、過度なダイエットなどが一時的な血流悪化を招き、発症の原因となっていると考えられます。
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(※1 参考文献出典:Suh DC, Kahler KH, Choi IS, et al. Patients with irritable bowel syndrome or constipation have an increased risk for ischaemic colitis. Aliment Pharmacol Ther 2007)

