虚血性腸炎(まとめ)
虚血性腸炎とは?突然の激しい腹痛・血便の原因と治療・予防法
「夜中に突然、左下腹部が激しく痛み出した」「トイレに駆け込んだが出ず、その後下痢になり、最後には真っ赤な血便が出た」という症状に驚き、強い不安を抱えていませんか。これらは「虚血性腸炎(きょけつせいちょうえん)」の極めて典型的な症状です。
本記事では、虚血性腸炎のメカニズムから、症状の経過、やってはいけない応急処置、大腸カメラによる検査、そして治療と予防策について、南流山にある消化器内科及び肛門内科の医師が詳しく解説します。
虚血性腸炎とは?なぜ起こるのか?
虚血性腸炎のメカニズム
「虚血(きょけつ)」とは、組織をめぐる血液の量が一時的に不足することを指します。心臓で起こる狭心症などと同じように、大腸の血管で一時的な血流不足が起こる病気が「虚血性腸炎」です。腸の壁に十分な酸素や栄養が届かなくなると、粘膜がダメージを受けてただれ(炎症や潰瘍)、激しい腹痛を引き起こします。そして、傷ついた粘膜から出血することで、血便(下血)が生じるのです。
左下腹部(下行結腸・S状結腸)に起こりやすい理由
大腸の中で、虚血性腸炎は圧倒的に「下行結腸」や「S状結腸」といったお腹の左側のエリアに発症しやすいという大きな特徴があります。左側の大腸は、別々の太い動脈から伸びてきた血管の「終着点同士が合流する境界線」にあたり、体全体の血流が滞った際に真っ先に影響を受けやすいためです。さらに、S状結腸はぐにゃぐにゃと曲がっているため便が滞留しやすく、便秘のときに圧力がかかりやすい場所でもあります。これらが重なることで、左下腹部やへその下あたりに激しい痛みが生じることになります。
虚血性腸炎になりやすい人の特徴
高齢者だけでなく若い世代にも増加中
かつて虚血性腸炎は、動脈硬化や糖尿病などの持病がある「高齢者の病気」とされてきました。実際に、患者全体の約80%は高齢者が占めています。しかし近年では、目立った持病のない20代〜40代の若い世代でも発症するケースが増えています。若い世代における発症の大きな引き金となっているのが、現代病ともいえる「便秘」や「過敏性腸症候群(IBS)」です。
大規模な臨床調査によると、便秘がある人は無い人に比べて虚血性腸炎のリスクが2.78倍、IBSがある人は3.17倍増加することが分かっています。トイレで強くいきむことによる腸管への負担や、IBSに伴う腸の激しいけいれん、過度なダイエットや脱水などが一時的な血流悪化を招き、発症の原因になると考えられています。
虚血性腸炎の典型的な症状と経過
虚血性腸炎は、問診だけで専門医が「おそらく虚血性腸炎だろう」と見当をつけられるほど、特徴的な3つのステップをたどります。
ステップ1:突然の激しい腹痛(特に左下腹部)
夜中や明け方に、前触れなくお腹(主に左側)が雑巾を絞られるように激しく痛み出します。冷や汗を伴うことも珍しくありません。就寝中の血圧低下や脱水、前日の便秘によるいきみがタイムラグを経て、血流低下の限界を迎えるために起こりやすいとされています。
ステップ2:強い便意と出ない苦しみ
激しい痛みとともにトイレに駆け込みますが、すぐには便が出ません。血流不足に陥った大腸がパニックを起こし、腸が激しくけいれん(過緊張)を繰り返すためです。
ステップ3:下痢から「鮮血の血便」へ
しばらくするとようやく便が出始め、すぐに泥状の下痢に変わります。その後、トイレに行くたびに血液が混じるようになり、最終的には真っ赤な血(鮮血)だけが何回も続けて出るようになります。
他の病気との見分け方
お尻から血が出る病気は様々ですが、「突然の激しいお腹の痛みを伴う」という点が、虚血性腸炎の一番の特徴です。例えば、高齢者に多い「憩室出血」は突然大量の血便が出ますが、基本的に腹痛を伴いません。いぼ痔や切れ痔などの肛門の病気も、お腹に激しい痛みを引き起こすことはありません。また、大腸がんや潰瘍性大腸炎はじわじわと長期的な時間経過をたどるため、突然激痛が走ることは稀です。
やってはいけない!危険な初期対応と応急処置
「急に激しい腹痛におそわれ、血便が出た」というパニックになりやすい状況だからこそ、正しい初期対応が重要です。
下剤・便秘薬、市販の痛み止めは絶対NG
「まだお腹に便が残っている気がする」からといって、自己判断で下剤を飲むのは大変危険です。弱った大腸を無理やり動かすことになり、腸管に穴が空く(腸管穿孔)といった致命的な合併症のリスクがあります。また、ロキソニンなどの消炎鎮痛剤は胃腸を荒らし、医師が重症度を正しく判断できなくなる原因になります。
水分補給は「少しずつ、こまめに」
下痢や下血による脱水を防ぐため水分補給は重要ですが、一気に飲むと腸を刺激するため、スポーツドリンクなどを「ひと口ずつ、こまめに」飲みましょう。食事は激しい痛みが落ち着くまでは控えめにしてください。
血便の様子を写真に撮っておく
診察時に血便の量や色(鮮血か暗い赤か)を正確に伝えるため、可能であればスマートフォンのカメラでトイレの様子を1枚撮影しておくと、より迅速で正確な診断に繋がります。
虚血性腸炎の分類と現代の実態
虚血性腸炎は、腸のダメージの深さによって「一過性型」「狭窄型」「壊死型」に分類されます。ネット上では「10%は腸が腐る」「緊急手術が必要」といった怖い情報が出てきて不安になるかもしれません。しかし、診断技術が飛躍的に進歩した現代の臨床現場では、実際には患者の約85%〜95%以上が後遺症を残さず綺麗に改善する「一過性型」です。過度に恐れる必要のない病気に変わってきているのが実情です。
なぜ急性期の大腸内視鏡検査(大腸カメラ)が推奨されるのか
虚血性腸炎の診断にはCT検査も有用ですが、当院では患者様の状態が安定していれば、最短当日〜1週間以内に「大腸カメラ」を積極的に行っています。
最大の理由は、患者様が一番心配される「大腸がん」や「命にかかわる大出血」の可能性を、その場で直接見て完全に除外できるからです。内視鏡で観察すると、S状結腸や下行結腸などの左側エリアに、縦走する発赤や偽膜(かさぶたのようなもの)、うろこ状粘膜といった虚血性腸炎に極めて特徴的な姿を確認できます。腹痛がある時期の検査は不安かと思いますが、当院では適切な鎮静剤の使用や、お腹が張りにくい「二酸化炭素(CO2)送気」を用いることで、痛みを最小限に抑えた楽な検査を提供しています。※鎮静剤などの効果は個人差がございます。
虚血性腸炎の治療と再発予防
最大の治療は「腸の安静」
虚血性腸炎の最大の治療は、傷ついた腸を「休ませること」です。腹痛や血便が激しい一番ひどい時期は絶食し、痛みが軽減していれば、消化の良いおかゆなどから段階的に食事を再開します。多くの場合、発症から数日〜1週間程度で自然に軽快するため、軽症(一過性型)であれば入院は必要ありません。
再発を防ぐための「水分補給」と「便秘治療」
虚血性腸炎は、約6.8%〜16%の確率で再発するリスクがあると言われています。確実な予防策はありませんが、当院では引き金となる要因を取り除くために以下の2つを推奨しています。
1日1,500mlの積極的な水分摂取: 水分不足を防ぐため、飲み水として1日1.5リットルを目安に、コップ1杯を1日7〜8回に分けてこまめに飲む習慣をつけましょう。
負担の少ない根本的な便秘治療: 腸に負担をかける刺激の強い市販の下剤に頼らず、便を柔らかくする新しいタイプのお薬などを用いて、体に優しい排便コントロールを行います。
まとめ・血便や腹痛にお悩みなら当院へ
虚血性腸炎は誰にでも突然起こりうる病気ですが、早期に適切な診断を行えば、過度に怖がる必要はありません。「夜中にお腹が痛くなって、血便が出た」「普段から便秘がちで不安」という方は、我慢して病状を悪化させてしまう前に、南流山内視鏡おなかクリニックへご相談ください。
当院はつくばエクスプレス・JR武蔵野線「南流山駅」から徒歩1分にあり、新松戸・北松戸(松戸市)方面、八潮・三郷(埼玉県)方面からもアクセス抜群です。確かな技術と鎮静剤を用いた「苦しくない大腸カメラ」で、皆様の不安を速やかに解消いたします。ぜひお気軽にご来院ください。※鎮静剤の効果は個人差がございます。


