逆流性食道炎
胃から食道に胃酸などが逆流することで生じる食道の粘膜障害を逆流性食道炎といいます。なお、胃から食道に胃酸などが逆流することで、食道に粘膜障害が無いにも関わらずわずらわしい症状が生じる病気を「非びらん性逆流症(NERD)」といいます。NERDは胃内視鏡検査では食道粘膜に異常を認めません。
食道癌
食道癌は60~70代の男性に多く見つかる癌です。男女比は約6:1で男性が多いです。食道癌にかかる危険因子は飲酒と喫煙で、特に両方とも当てはまる人は注意が必要です。また、栄養状態が悪い人や野菜摂取が少ない人も食道癌になりやすいので、食事習慣に注意することはとても大切です。
食道癌も他の癌と同様に、初期の段階では症状はありません。定期的に胃内視鏡検査を受けて、食道癌がないことを確認する、食道癌があっても早期で診断して、体に侵襲の少ない治療を受けるようにすることが大事です。
食道カンジダ症
食道カンジダ症とは、食道にカンジダ(Candida Albicance)という真菌が繁殖する病気です。真菌とはいわゆるカビのことです。私たちの皮膚や口腔内などには多数の細菌や真菌が存在して共存しています。通常はこれらの微生物は私たちの体に悪い影響はありません。しかし、免疫が低下したり抗生物質を使用したりすると常在菌のバランスが変わって症状が出ることがあります。
食道にカンジダがいること自体は病気ではありませんが、異常に増殖すると、のどの違和感や食道のつかえ感、飲み込みにくさを感じることがあります。このような症状があって、胃内視鏡検査で食道カンジダ症と診断した時は治療の対象となります。
食道裂孔ヘルニア
胸とお腹は横隔膜という膜状の筋肉が境界となっています。横隔膜を貫くように大動脈・静脈、そして食道がお腹へつながっています。食道が横隔膜を貫く場所を食道裂孔とよびます。なんらかの理由によって食道裂孔から胃の一部が胸に向かって飛び出すものが食道裂孔ヘルニアです。
食道裂孔ヘルニアが生じるのは加齢によって横隔膜の構造が弱くなることや、肥満や喘息、円背など姿勢によって腹腔内圧が高くなり、胃が胸腔側へ押し上げられるためです。食道裂孔は、胃から食道へ胃酸や食物が逆流しないようにする働きがあります。食道裂孔ヘルニアになると胃酸や食物が逆流しやすくなり、逆流性食道炎となってしまうことがあります。無症状の時は特に治療は行わずに経過をみますが、逆流性食道炎の症状が気になるときは治療を行います。
胃・十二指腸潰瘍
潰瘍とは炎症などによって粘膜が完全に欠損した状態で、胃・十二指腸潰瘍では胃や十二指腸の粘膜が脱落し、その下の組織(粘膜下層や筋層)が露出します。胃や十二指腸は表面の粘膜が胃液や腸液から自身の組織を守る働きをします。しかし潰瘍が生じると粘膜の防御機構が破綻するため、重症化すると胃・十二指腸壁に穴があいて腹膜炎に至ることもあります。
胃・十二指腸潰瘍でよくみられる症状は、みぞおちのあたりの鈍い痛みです。その他に、胃の働きが低下することでゲップや胸やけ、吐き気、もたれ感、膨満感などが生じることもあります。潰瘍が進行して出血すると血便(タール便という黒色のドロッとした便が典型的です)や吐血といった症状も出てきます。
胃・十二指腸潰瘍となる主な原因はピロリ菌感染と解熱鎮痛薬(非ステロイド抗炎症薬:NSAID)の使用です。上記のような症状が気になる場合は胃内視鏡検査を受けて潰瘍の有無を確認するとともに、ピロリ菌がいれば除菌治療を行いましょう。また、薬が原因で潰瘍となる場合は、薬の中止、変更を考える必要があります。
胃癌
胃癌は早期ではもちろん、進行した状態でも自覚症状に乏しいことが多いです。胃癌によって食欲不振や体重減少、嘔気・嘔吐などの症状が出る時は、癌が進行していることを疑います。胃癌は早期で発見すれば治癒することが十分望めます。癌のリスクとなるピロリ菌を除菌すること、その後も定期的に胃内視鏡検査を受けることが大事です。
胃ポリープ
胃粘膜内に隆起したイボのようなできものを胃ポリープと言います。ほとんどの場合で無症状です。良性のものがほとんどである為、そのまま切除せずに経過観察だけでも問題ありません。稀に、癌との鑑別が難しい場合や癌化のリスクがあるものがあります。その場合は、ポリープの一部を採取して生検を行い、病理診断で癌化するリスクがあると評価した場合にポリープ全体を切除していきます。
胃粘膜下腫瘍
胃は表面から粘膜、粘膜下層、筋層というようにいくつかの層からできています。癌は表面の粘膜から発生するものです。粘膜下層や筋層から腫瘍ができることがあり、これを粘膜下腫瘍といいます。粘膜下腫瘍は癌ではないのですが、中には他の臓器へ転移するという癌と同じような性質をもつものがあります。そのため、粘膜下腫瘍は切除治療の対象となります。ただし、全ての粘膜下腫瘍が切除対象となるのではなく、大きさなどで判断します。大きくならないか、定期的な検査を受けることが必要です。