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【50歳以上の皆様へ】大腸がんから身を守るために ― 大腸内視鏡検査のすすめ

「便は出てるし、元気だから大丈夫」…本当にそうでしょうか?
50代、60代の皆さま。
普段あまり病院にかからないという方も多いかもしれません。中には、健康診断すら何年も受けていないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「特に症状はないから大丈夫」
「忙しいし、面倒だ」
「内視鏡って痛そうで怖い」

そう考えている方こそ、ぜひ最後までこの記事をお読みください。
この記事では、大腸がんという身近な病気から命を守る方法として、大腸内視鏡検査の重要性についてお伝えします。

日本人男性の10人に1人、女性の13人に1人が大腸がんになる時代


現在、日本では2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんで亡くなると言われています。中でも大腸がんは増加傾向にあり、男性では前立腺がんに次いで2番目、女性でも乳癌に次いで2番目に多いがんです。

男性のがん死亡原因 第2位(1位:肺がん)

女性のがん死亡原因 第1位

このように、大腸がんは決して他人事ではありません。50歳を過ぎると発症率が急上昇するため、「まだ何の症状もないから平気」と思っている方が最も危険です。

 

大腸内視鏡検査は、命を守る“がん予防”の切り札
内視鏡で死亡率が減る
大腸内視鏡検査を受けると死亡率が62%低下した

大腸がんを早期に発見する

がんになる前の「ポリープ」を切除して予防する

アメリカの大規模な研究(Shaukatら、NEJM 2021)では、定期的に内視鏡検査を受けた人は、受けていない人に比べて、

大腸がんの発生率が52%減少

死亡率が62%減少

という結果が出ています。
これは、他のどんな検査とも比較にならないほど大きな効果です。

食事や運動を気を付けることはとても大事ですが、内視鏡検査を受けることによる死亡率低下を上回るような食事や運動療法の研究報告はまだありません。

 

「健診で便潜血検査を受けてるから安心」は危険な思い込み


多くの方が職場や地域の健康診断で受けている「便潜血検査」。
これは大腸がん検診の入口として有効ですが、限界がある検査です。

便潜血検査の特徴


感度:早期がんは約30%、進行がんは約80%

進行がんには強いが、早期がんやポリープは見逃しやすい

1回の陰性で「安心」と思ってはいけない

推奨されている2回法でがんを見落とす確率は・・・

早期がんで約50%、進行がんは4%

毎年便潜血検査を受けておけば早い段階で大腸がんをみつけることができます。

つまり、便潜血検査はあくまで「ふるいわけ」であり、陽性だったら必ず内視鏡が必要ですし、陰性でもリスクがゼロではないのです。


厚生労働省や日本消化器がん検診学会の統計によれば、

便潜血検査が陽性の人の2~6%に大腸がんが見つかります。

また、30~50%の人に大腸ポリープ(前がん病変)が発見されます。

これは非常に高い確率です。
つまり、便潜血陽性は“赤信号”であり、そのまま放置すれば命に関わる可能性があるのです。

 

少しでも気になる症状があれば内視鏡を

便潜血検査で陽性となれば必ず内視鏡を受けましょう。

例え陽性でなくても、50歳以上であれば、少しでも気になる症状があれば内視鏡検査を受けましょう。

大腸がんは進行するまで症状が出にくいです。

何も症状がないから安心、ではないのです。

症状が出たら検査を受けるという方がいます。

がんのために「便が出にくくなった」「血便がでる」、これはどのような状況でしょうか?

便が出にくくなるくらいに大腸がんが大きくなった、もろい大腸がんのために血便が続く・・・

このような時にはすでに大腸がんは進んでいることが多いです。進んでいるほど大腸がんは治りにくくなります。

ですから、症状が出てからでは遅い、症状が出る前に早期発見、早期治療が重要なのです。

50歳以上では、むしろ何も症状が無くても内視鏡検査を受けた方がよいくらいです。

 

早期発見はとても大事

痔核の手術前に内視鏡でポリープを発見されました。手術後にポリープ切除を予定しましたが、症状がないため放置し通院しなくなりました。

3年の月日が経ち、血便が続くと来院されました。

すぐに内視鏡を行いました。

切除をすすめていたポリープは、腸をふさぐくらい大きながんへ進行していました。

3年前では内視鏡で切除すればそれで治癒していたかもしれません。

それでも内視鏡検査を避けてしまう理由とは?

「痛そうで怖い」

「恥ずかしい」

「下剤を飲むのがつらい」

「忙しくて時間がない」

その気持ち、とてもよくわかります。
しかし、現代の内視鏡検査は大きく進化しています。

 

【安心ポイント】鎮静剤を使えば「苦痛のない検査」が可能です


当院では、検査時に鎮静剤(静脈麻酔)を使用して、眠った状態で検査を受けられるよう配慮しています。

「目が覚めたら終わっていた」

「思ったより全然楽だった」

「こんなに簡単なら、もっと早く受ければよかった」

というお声をいただいています。

また、下剤の飲み方も改良が進んでおり、服用しやすい味・量の下剤が選べるようになっています。

 

こんな方はぜひ一度、検査をおすすめします


✅ 50歳以上で大腸内視鏡を受けたことがない
✅ 健診で便潜血陽性と言われたことがある
✅ 親族に大腸がんの方がいる(家族歴)
✅ 最近、便秘や下痢が続く・血便が出た
✅ 健康診断で再検査をすすめられたが未受診

1つでも当てはまったら、ぜひ一度ご相談ください。

 

よくあるご質問

Q. 検査はどれくらいの時間がかかりますか?
A. 検査自体は15〜30分程度です。鎮静剤を使用する場合は、検査後20分ほど休んでいただきます。現在用いている鎮静剤では、これまで(2023年6月~)全ての方が検査後問題なく帰宅できています。

Q. 費用はどのくらいかかりますか?
A. 保険適用となる場合(症状がある、便潜血陽性など)は、3割負担で約6,000~9,000円程度です。ポリープを切除した場合は約20,000~30,000円程度となります。

Q. ポリープが見つかった場合は?
A. 基本的にはその場で切除可能です。切除後は食事・運動の制限がありますが、日帰りで帰宅できます。非常に大きなポリープや早期がんのため入院して治療が必要なポリープと診断した場合は、ご希望の専門施設へご紹介いたします。

 

最後に

あなたの命を守るのは、今の“行動”です
大腸がんは、早期発見・早期治療で90%以上が治るがんです。
そして、大腸内視鏡検査こそが唯一の予防と早期発見を両立できる方法です。

「何もないことを確認する」
そのことが、あなたの人生を守り、家族の安心につながります。

「まだ内視鏡を受けていない」
「50歳を過ぎたばかりで何も症状がない」

――そんなあなたにこそ、受けていただきたい検査です。

出典・参考資料
Shaukat A, et al. N Engl J Med. 2021;385(8):706-716.

厚生労働省「令和4年(2022年)人口動態統計」

国立がん研究センター「がん情報サービス」

日本消化器がん検診学会ガイドライン

日本消化器内視鏡学会「大腸内視鏡Q&A」

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